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ゴーストスロッター 第47話



■ 第47話 ■

八尾とのやりとりがあってから約4時間が経過。

メンバーは優司・日高・真鍋・小島、場所は串丸――――――――



「随分大掛かりな勝負だなぁ?
  わざわざ監視までつけるなんて。」

いつものように、豪快にビールをあおっている真鍋。
優司たちが持ち帰ってきた紙を見ながら、ちょっと意外そうにしていた。

目の前にあった枝豆をつまみながら、日高が返事をする。

「まあ、ルールがルールだからな。
  正確に相手がどれくらい回してるか・投資してるかを知らないと駄目だろ?
  いてもいなくていい存在なら俺だって引き受けねぇさ。」

ここで優司が済まなさそうにしながら喋りだした。

「ホント助かるよ日高、引き受けてくれて。
  真鍋だとちょっとしたことでケンカになりそうだし、小島はいまいち頼りにならないしなぁ。」

「ちょ、それヒドくないッスか!?
  俺だってやるときゃやりますよ!」

「つーか小島はまだしも、なんで俺まで入ってんだよ!
  俺だって意味もなくケンカしたりしねぇっつーの!」

「え? あ、ま、まあね。
  嘘だって。 そんな怒るなよ・・・・」

「・・・・まあいいけどよ。」

小島はへらへらしていたが、真鍋は若干本気だった。

軽く出来上がってしまっているため、やや絡みやすくなっているのだ。
真鍋は、既に中ジョッキ4つを空けている。

「(真鍋も違う時には頼りになるんだけどなぁ。
  こういう冷静さが必要なのはやっぱ日高じゃないと。)」

改めて再認識し、目の前のビールへ手をのばす優司。

一旦話が途切れたところで、日高が話題を変えた。

「さてと、まずは決めなくちゃならないことがあるぜ夏目。」

「ん?」

「のんびりしてんなぁ・・・・
  打つ機種だよ!
  もう店も決まってんだし、どれ打つのか考えとかなきゃまずいだろ?」

「・・・・・だね。
  いや、ほら、まだ10日以上あると思ってさ・・・・」

「練れる対策は早いうちに練っといた方がいい。
  不測の事態ってのは、いつ起こるかわかんねぇんだぜ!?」

この日高の言葉に真鍋も続く。

「本当だぞ!
  なんだか急にのんびりするようになりやがったなぁ。
  そんなんで大丈夫か!?」

「大丈夫だよ! しっかりやるって!」

そう言って、懐からお馴染みのスロ手帳を取り出す。
そして、『ベガス』の設置機種のページを開いた。


---------------------------------------------------------

・北斗の拳 : 36台
・吉宗 : 24台
・巨人の星 : 10台
・ボンバーパワフル : 5台 
・GoGoジャグラー : 12台
・アントニオ猪木という名のパチスロ機 : 5台
・ファイヤードリフト : 5台 
・ゴールドX : 5台 
・猛獣王 : 5台

---------------------------------------------------------


この一覧を見て、ややブスっとしている小島。
その様子に気付き、優司が声をかける。

「どうしたんだよ小島?
  仏頂面して。」

「別に・・・ なんでもないッス。」

「ん?
  ・・・・・あッ!
  そうか、ここって確か小島がゴールドXで出玉没収されたっていう・・・・・」

「ちょ、もういいですって!
  今でもムカついてんスから!」

「そうなのかよ・・・・ 意外としつこいなぁ。」

「俺は不条理なことが許せないんスよ。
  ったく、あの近藤っていう主任の野郎が頭固くて・・・・」

「・・・・・まあなんでもいいけど。」

これ以上下手に突っ込んで、小島がアツく語りだすと面倒だと判断してあっさり流す優司。

「で、夏目はとりあえずどの機種を狙おうとしてんだ?」

日高が問う。

「そうだなぁ。
  まず、北斗・猪木・ゴールドX・猛獣王はアウトだね。
  AT機は設定無関係の爆発が怖すぎる。
  より多く負けた方が勝ち、っていうルールじゃ手を出せないね。
  もちろんストック機の爆裂も怖いけど、AT機の方が遥かに怖い。」

「まあな。
  機械割どうこうってよりは、一発デカいの引いちまったらそこで終了だもんな。」

「ああ。
  あと、できれば吉宗もご遠慮願いたいな。
  残った5機種の中では一番荒いし。
  まあ、ストック飛ばした台でも分かれば圧倒的に吉宗が有利なんだけどなぁ。
  さすがにそこまではわかんないし、パスだね。」

真鍋が口をはさむ。

「でもよ、その分ガツンとハマれるぜ?
  一撃3000枚減らすことも珍しくねぇし。」

「わかってる。
  だから、後半になってヤバそうだったら使うかも。
  まずは無難にいくよ。」

「無難、ってーと?」

「最初は巨人かな。
  理詰めでいくとそうなるでしょ。」

「理詰め?」

「ああ。
  残った4機種のそれぞれ設定1の機械割は、ゴージャグとファイドリが96%、ボンパワが95.8%、
  んで巨人が95.2%だ。
  巨人が一番機械割低いでしょ?」

呆気に取られる真鍋。

「・・・・お前さぁ、それってさっき調べたのか? それとも・・・・」

「いや? こんなのは覚えてて当たり前でしょ。
  出回ってる機種の各設定ごとの機械割を覚えておくなんて基本中の基本じゃん。」

一同、「そんなわけないだろ」と心の中で突っ込みを入れる。
と同時に、改めて優司のスロに関するレベルと入れ込みぶりを思い知った。

手元のジョッキを持ち上げ、残ったビールを一気に体内へ流し込む日高。
流し込みつつ、こんなことを考えていた。

「(さっきまではどうも油断してる感じがあって不安だったけど、そんなもん関係なく案外簡単に
  勝ちきるかもな。
  俺らとは土台が違う。)」



パチスロ上級者というものは、概ね2パターンに分かれる。

2,3機種に異常に精通している『狭く・深く』タイプか、ほとんどの機種の情報を網羅しているが、
それぞれの機種についてのマニアックな部分は把握していない『広く・浅く』タイプ。

しかし優司は、本来不可能なはずの『広く・深く』タイプ。
これは、よっぽど凝り性で、よっぽど能力があり、よっぽどヒマがなければできないことだった。



理詰めで巨人を選択しようとしている優司に安心し、緊張がほぐれていく日高。

「ま、じゃあ巨人で大丈夫そうだな!
  しっかりやってくれよ。
  んで、終わったらちゃんといいモン奢れよな。
  監視役だって楽じゃないんだからよ!」

「わかってるって!
  どうせ焼肉でしょ?
  スロッターの戦勝祝いは大体焼肉って相場決まってるもんね!」

この後も4人は大いに盛り上がり、段々と夜は更けていった。
 

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