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ゴーストスロッター 第37話



■ 第37話 ■

話は戻り、優司達が飲んでいる居酒屋『魚次郎』。

依然、優司の愚痴は続いていた。

「なぁ小島ァ・・・・
  なんで俺みたいな優秀なスロッターがこんなに苦しまなきゃいけねぇんだよぉ・・・
  おかしくねぇかぁ・・・?」

既に泥酔状態の優司。

「わ、わかったッスから!
  なるべく早めに探しますよ!
  日高さん達も動いてくれてるんだし、もう少ししたら見つかりますって!」

「だといいけどなぁ・・・・ どうだかなぁ・・・・」

「・・・・・・・」

もはや、小島も斉藤もついていけないといった感じだった。
たまらず斉藤が反論する。

「ちょっと待ってよ!
  あの二人だって一生懸命探してくれてるんだし、そんな言い方はないんじゃないの!?」

「なぁにムキになってんだよ斉藤ぉ。
  いちいちあつくなるなって〜。」

酒に染まった真っ赤な顔をしながら、半笑いで斉藤の肩に手を置く優司。

酒に弱い方ではない優司だが、今日はいつもよりも明らかに酒量が多い。
普段とは比べ物にならないくらいの酔い方だった。

ここで二人とも我慢の限界に達し、会計をして店を出ることにした。


**********************************************************************


会計を済ませ、店の外へ出た3人。

「んじゃぁ、俺は帰るよ〜。
  つってもカプセルだけどな! ハッハッハッ!!」

「・・・・・・・」

「じゃあなぁ〜! また明日ぁ〜!」

そう言って、千鳥足で去っていく優司。

そんな優司を見送った後、斉藤と二人になった小島がポツリと漏らす。

「夏目君、なんか変わっちゃったッスね・・・・」

「ああ、確かに・・・・・
  さすがに普段はあそこまでじゃないけどな。」

「・・・・・まあ、今日はだいぶ酒入ってたッスからねぇ。」

「でも、最初会った時と比べりゃかなり変わったな。
  真鍋さんに勝った人だからってんで、同い年とはいえかなり尊敬してたんだけどなぁ、俺は。
  なんか、徐々に変わってきちゃったよな。」

「・・・・・鮫島に勝ったあたりからッスよね?
  アイツが金バックれようとした時に真鍋さん達が追い込みかけたじゃないッスか?
  その様子を見て、『まだ甘い、もっと徹底的に追い込もう』みたいなこと言ってたの見ちゃって・・・・
  前までのあの人なら、絶対そんなこと言わなかったのに・・・・」

「うーん・・・・ 確かに前よりは何事にも強気になったよな。
  よく言えば『自分に自信を持つようになった』、悪く言えば『傲慢になった』、って感じだな。」

「そうッスね。
  自分は今でも夏目君を嫌いじゃないんスけど、やっぱり以前よりは取っ付きにくくなったッス・・・・」

「・・・・・・・」

小島の言葉を、ただ黙って飲み込む斉藤。



優司は確かに変わった。
しかし、これはある程度しょうがないことでもあった。

人間誰しも、成功を重ね過ぎると多かれ少なかれ変化してしまうもの。

特に、優司は成功を重ねる間隔が短かった。
この「成功の間隔」が短いほど、人間性の変動は大きくなりがち。

30万もの金がかかった勝負で、たったの3ヶ月で破竹の8連勝。
『ホームレス』という立場から、いきなりトータル240万もの金と、スロッターとしての多大な名誉、
その両方を短期間で手に入れてしまったのだ。

しかし、それが逆に足かせとなり、自らを苦しめている。
このジレンマ、そして『8連勝』という結果から起こってしまった自分の力への過信、これらにより、
優司の中で大きな変化が表れてきた。

かなり屈折した形で・・・・



軽くため息をついた後、斉藤が話し出す。

「まずは相手を見つけることだな。
  広瀬君にも勝っちまった今、こうなったら多少分が悪い勝負でもしょうがないんじゃないか?」

「・・・・・というと、北条さんとか緒方さんとかッスか?」

「ああ、他に見つからないんじゃあ、どうしようもないだろ。
  まあ、彼らが受けてくれるかどうかはわかんないけど。」

「・・・・・・やっぱ、広瀬さんとの勝負は止めるべきだったんスかねぇ。」

「かもね。 でも、それを今更言ったってしょうがないよ。」

「まあ、そりゃそうッスよね・・・・」

それから、しばらく無言のままでいる二人。

そして、何かを決意したように話し出す小島

「あの・・・・・・
  なんだったら、ここらで神崎さんに挑んでみるってのは・・・・・?」

「は・・・・?
  お前、何言ってるかわかってるのか?」

「い、いや、そりゃ無茶言ってんのはわかってるッスけど、是非見てみたいって感じで・・・・」

「あのなァ・・・・
  小島の神崎憧れが凄いのは知ってるけど、もし実現したとしてもどっちかが泣くことになるんだぜ?
  そもそも絶対勝負なんかしてくれないって!」

「やっぱそうッスかねぇ・・・・・・」

「ああ。
  もし勝負してくれても、夏目君が負けるのは目に見えてるぞ。
  あの人は格が違うんだしさ。」

「うーん・・・・・
  確かに神崎さんが負けるなんて姿は想像できないッス。」

「・・・・・・だろ?
  俺たちはあくまで夏目君の味方なんだ。
  そうじゃなきゃダメなんだよ。
  あんましそういうことは言わない方がいいぞ。」

「・・・・・ッスね。 覚えときます。」

二人とも、なんとなく曇った表情のまま黙りこくってしまった。
それからしばらくの沈黙の後、二人は解散した。
 

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