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ゴーストスロッター 第127話



■ 第127話 ■

時間は13:00。

2階スロットフロアには、パチンコから流れてくる客や近所の常連に加え、サボリーマンたちも
増えてきた。

週一イベント中ということもあり、午前中よりは多少店内が活気づいてきている。

といっても、所詮は小規模な不人気店。
客付きは3割程度にすぎない。
しかもその客付きは、北斗・吉宗といった爆裂機に集中している。

そんな中、優司と神崎の二人は依然台を決められずに右往左往していた。

その様子を、やや退屈そうにしながら見守っている広瀬と伊藤。
審判役のこの二人にしてみれば、優司や神崎に動きがなければ特にやることもないため、
退屈そうにしてしまうのも無理はない。

現在この勝負に関連するメンバーで、店内にいるのは、優司・神崎・広瀬・伊藤の4人。

朝は一緒に来たものの、そこから一旦どこかへ行ってしまった伊達たちや土屋たちは、あれから
一度も様子を見に来たりはしていない。

もう、完全に本人たちに任せている、といった模様。



「(もう昼の1時か・・・・
  まさか、開店から3時間経っても何にも掴めないとはね・・・・・)」

神崎は焦っていた。
いくら読みづらいホールとはいえ、ここまで何も手掛かりが掴めないとは予想していなかったのだ。

「(夏目も相当苦戦してるな。
  無理もない。 こんな八方塞りの状況じゃあ・・・・・
  一体あのヒントはどういう意味なんだ?
  見る限り、据え置かれてる台なんて一台もない。
  ヒントがヒントだから、前日6だった台は結構回されてるけど、1台たりとも6っぽい挙動を示してる
  台がない。
  『昨日の設定がそのまま』か・・・・・
  何か違う意味が込められてるのか?
  設定据え置きっていう意味じゃないのか?)」

定位置と化してきた吉宗のシマの端っこで壁に寄りかかりながら、じっと考え込む。

「(唯一名指しで機種名が挙がってるこの吉宗のシマに張り付いてるけど、今のところ何も
  収穫はないし・・・・・
  今夏目がいる方にあるハジ2の125番台はちょっと6っぽいな。
  薄いゲーム数で何回か当たってるから謎解除が多いってことだろうし、初当たりから頻繁に
  連チャンに繋がってるし。
  ・・・・・・・でも、そんな通り一遍の設定推測じゃとても決心できない。)」

腕を組み、右手人差し指の付け根を顎のあたりに軽く当てながら、厳しい表情を浮かべる。

「(とにかく、安易に動いちゃいけない。
  カイジくらいに丸分かりな機種以外、挙動で6を判断しようとしたらダメだ。
  そんな曖昧なことはできない。
  やっぱり、あのヒント・・・・・・・ヒントから確実に6をあぶりだして選ばないと、結局は運否天賦の
  勝負になっちまう。)」

稼働状況から6を推測する、という普通の立ち回りで6を掴みにいこうかと一瞬考えてしまった神崎だが、
すぐにその考えを否定した。

それしか方法がないのならば仕方がないが、「ヒント」という形で、確実に6のありかが示されているのだ。

いかにヒントが難解なものであろうとも、この状況で普通の設定推測を頼りにしようとするのは明らかに
下策。

「(『ミラクル』のヒントは、一見意味不明だったり解読不可能なものだったりすることが多い。
  でも、蓋を開けてみれば必ずヒントと設定6の場所が濃厚に絡んでるんだ。
  過去の例を鑑みても、ヒントで嘘をつくということは絶対にない。
  なんとしても、あのヒントが意味することを掴むんだ。)」

再度心に固く誓い、一旦吉宗のシマから離脱してカイジのシマへ向かった。

カイジのシマへ着くと、すぐさま全台のデータチェックを開始した。
現在、このシマに客はいない。

チェックが終わると、少しシマから離れたところまでいき、壁に寄りかかりながら再び考え込んだ。

「(この時点でほぼ6が否定されてるのは、昨日6だった台1台だけだ。
  他の8台はまだほとんど回されてないからなんとも言えない。)」

また、腕を組みながら人差し指の付け根を顎のあたりに当てだした。
真剣に考えている時に出る、神崎のクセだ。

「(問題は、このシマに6があるのかどうか。
  まずはそれを確かめたい。
  1台でも6の位置がわかれば、何か見えてくるかもしれない。
  頼む、もっと稼動が上がってくれ・・・・
  ってか、わりかし新台のカイジがなんでこんなに客付き悪いんだよ・・・・・)」


**************************************************************************


「(カイジを見に行ったのか。
  6がわかりやすいカイジで、とりあえず6があるのかどうか探そうって腹か?
  確かに、1台でも6の位置がはっきりとすれば何かわかるかもしれないしな。)」

優司は、神崎の動きをチェックしながらそんなことを考えていた。

「(ってことは、神崎もこの吉宗のシマじゃ何も掴めなかったってことだな。
  でも、そりゃそうだよな。
  ハジ2の125番台が6っぽい、ってことがなんとなく見えてきただけで、他に収穫なんてないし。)」

優司も、神崎が6っぽいと睨んだ台にあたりはつけていた。
しかし、もちろん軽々しく座ったりなどは出来ない。

一度座ったらもう台移動はできないルール。
このルールで、「おそらくそうだろう」程度で動くわけにはいかない。

このあたりの認識は、神崎同様優司ももちろん持っていた。

「(俺も、このまま吉宗中心で見てても埒があかないな。
  いろいろ見てみるか・・・・・)」

もちろん吉宗だけを見ていたわけではなく、ちらほらと他のシマの様子も見に行っていた。

しかし、メインで滞在していたのはこの吉宗のシマ。
だが、あまりの成果の少なさに、メインで滞在するシマを変えようかと考えたのだ。

そして優司は、近くにあった夢夢ワールドDXのシマへ移動した。

「(相変わらず全然稼動されてないな・・・・
  えーっと、前日6だった台が左ハジ3にある133番台・・・・と。
  うわっ、この台もまだ700Gくらいしか回されてない。
  1時間前に見た時から100Gくらいしか稼動されてないじゃん。
  ・・・・・でも、700Gでバケ1回か。 こりゃ回す気も起こらないよな・・・・・)」

思わず大きなため息をついた。

「(このホールは、ステチェンによる設定変更判別を封じてるんだよな。
  客の少ない店なのに対策だけはきっちりやってくるもんだから、さらにやりづらいんだよなぁ・・・・・
  さて、どうするか・・・・・・)」

続いて、主役は銭形のシマに移動した。

「(夢夢よりかは回されてるな。
  さて、前日6だったのが左ハジの153番台で・・・・・・・・・・ダメか。
  565G抜けでヤメられたっきりだ。
  さっきチェックした時から変わってない。
  これじゃまだわからないなぁ。
  もうちょい粘ってくれよ・・・・)」

ここでも大きなため息が出てしまった。

「(でも、カイジで6の据え置きがなかった時点で、他の機種も普通に設定が据え置かれてる可能性は
  ほぼないんだよな。
  それはわかってるつもりなのに、こうやってダメモトで前日6の台を女々しくチェックしちゃってる。
  くそ・・・・・)」

小さく舌打ちをし、銭形のシマをボケーっと眺めながら壁に寄りかかった。

「(こうなったら据え置きじゃなくて、追加された6を探すか・・・・・?)」

一瞬そう考えた優司だが、すぐに考え直した。

「(いや、ダメだ。
  それは何度も考えたけど、追加された6についての情報は何もないんだ。
  つまり、現在までの挙動で推測して探すしかない。
  それじゃダメなんだ!
  なんとか心を折らずに、ヒントを活かさないと・・・・・)」
 

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