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ゴーストスロッター 第126話



■ 第126話 ■

「(超えた・・・・・・・
  やっぱり、普通に292Gを超えてきた。
  そうだよな。 普通に言葉通り設定据え置きなわけがない。)」

292Gを超えた瞬間捨てられた158番台を眺めながら、そんなことを考えていた優司。
すぐさま、このシマから離れた。

「(ってことはどういうことだ?
  あのヒントには、他にどんな意味があるってんだ・・・・・?)」

顔をしかめながら、再びヒントが貼られた掲示板のところまで行く。

『吉宗以外、昨日の設定6がなんとそのまま! もちろん、追加された6もあり!』

掲示板に貼られている紙に書かれたこのヒントをしばらく眺めた後、静かに外へと出て行った。


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店を出たすぐのところにある自販機でコーヒーを買い、そのままブラブラと周辺を散歩する優司。

「(ヒントは至ってシンプルだ。
  別に何も引っ掛かるようなところはない。
  ・・・・あえて無理矢理引っ掛かろうとするなら、『吉宗以外』ってとこと『設定そのまま』ってところか。)」

優司は一旦立ち止まった。

「(なんで吉宗以外なのか。
  なんで吉宗だけをイベント対象機種からはずす必要があったのか。
  ・・・・・・でもそれは、イベントの都合で対象機種と非対象機種を置くのは自然なことだしな。
  特に理由付けがいるようなことじゃない。)」

軽くかぶりを振った後、再び歩き出した。

「(それともう一つ、なんで『設定そのまま』という表現を使うのか。
  普通は『設定据え置き』っていう表現を使うんじゃないのか。
  ・・・・・・でもこれも、言い方なんてホールによって違うし、別に違和感を感じるようなことじゃないもんな。
  設定6のことを『最高設定』って言ったり『アンコウ』って言ったりするホールもあるわけだし。)」

こうして優司は、あえてわかりきっていることでもイチから丁寧に潰していった。
僅かな見落としもないように。

「(結局どっちもただの細かい勘繰りだ。 関係ない。
  ・・・・・ってことは、やっぱりヒントはホールの中にあるんだ。
  稼働状況を見ながら、ホール内を重箱の隅をつつくようにチェックしていくしかない。)」

そう決心した優司は、再びホールへと戻っていった。


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戻ると、神崎が入り口付近にある吉宗のシマをつぶさに観察しているのが視界に入った。

「(やっぱり神崎も吉宗チェックか。
  まあ、そうなるよな。)」

優司も、戻ったら真っ先に吉宗のシマをチェックする予定だった。

ヒント文章に名指しで登場している唯一の機種。
となると、このシマに強烈な手掛かりがある可能性が高いのではと考えたのだ。

神崎とは反対側の位置を陣取った優司。
これにて、シマの両端で吉宗を観察する二人、という構図が出来上がった。

18台設置されている吉宗のシマだが、打っている客は7人ほど。
しかし、他のシマに比べればこれでも盛況な方だった。

「(よし、しばらくここで吉宗のシマを見続けよう。
  なんでもいい。
  まずはなんでもいいから、どんなに細かいことでもいいから、なんとか取っ掛かりを見つけるんだ。)」


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二人が吉宗のシマを観察し始めてから1時間が経過。

たまにシマ内に入って各台のデータをチェックしたりしているものの、二人はいまだ打つべき台を
決められずにいた。

そんな二人の様子を見ていて、審判役の一人である伊藤が、隣りにいる広瀬に話しかけた。

「動かないですねぇ、二人とも。」

「・・・・だな。」

「広瀬さんは何かわかりました?
  今まで見てて。 あのヒントの意味とか。」

「さあ。 皆目見当がつかないよ。
  差し当たり、普通に設定を据え置いてるわけじゃない、ってことと、吉宗以外は前日と前々日の履歴が
  消えてる、っていう当たり前のことくらいしかわからないね。
  でも、そりゃそうだろ。
  あの二人ですら動けずにいるのに、俺がわかるはずない。」

「え〜? そんなこと言わないでくださいよぉ。
  広瀬さんだって、あの二人に劣ってなんていないですって。
  だからこそ、こんな役を頼まれてるんでしょうし。」

「いや、そりゃ言いすぎだよ。
  到底敵わないね。
  実際俺は夏目に負けてるし。」

「そ、それは・・・・勝負のアヤで・・・・」

「そんなこと言ってたら、何でも勝負のアヤで片付けられちゃうだろ?
  お前がそう言ってくれんのは嬉しいけどさ、そんな気を使うなよ。」

「べ、別に気を使って言ってるわけじゃないですよ!」

少し語気を荒げる伊藤。
実際、伊藤は本心から言っていた。

しかし、広瀬はニコリとして軽く受け流した。

広瀬がこれ以上この話を望んでいないことがわかり、なんとなく話を変える伊藤。

「ちなみにこの勝負、どっちが勝つと思います?」

「うーん・・・・・・
  現時点ではどっちとも言えないなぁ。
  でも・・・・」

「でも?」

「いや、なんでもない。」

「ええ〜!?
  なんですか? 教えてくださいよ〜!」

「大したことじゃないよ。
  勝負が始まる前から、多分こうなるだろうなって思ってたことがあっただけでさ。」

「何を考えてたんですか?」

「この勝負の勝者。
  でも、別に根拠はないし、直感で感じただけだよ。」

「広瀬さんの直感って結構当たるじゃないですか?
  根拠なんかなくてもいいですから、広瀬さんが勝つと思ってる方を教えてくださいよ。」

「・・・・・・・・まあ、いいけどさ。」

「やった!
  ・・・・・・で、どっちですか、勝ちそうなのは!? 神崎? 夏目?」

「・・・・・・・・・・・」

広瀬は少し黙り込んだ後、「直感で感じた勝者」の名をボソリと呟いた。
 

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